つくる旅
木工品・竹工品

高山茶筌

Takayama Chasen (Tea Whisks)

奈良県

奈良県生駒市高山町で作られる茶道用の竹製茶筌。国内生産のほぼ全量を占める産地として知られ、精緻な穂先の加工が最大の特徴。

歴史

高山茶筌の起源は室町時代にさかのぼるとされ、当時の高山城主であった竹田氏が茶の湯の隆盛とともに茶筌の製作を家臣たちに奨励したことが始まりと伝えられている。茶道の普及とともに需要が高まり、高山町は茶筌の一大産地として発展した。江戸時代には諸大名への献上品としても珍重され、技術と名声がさらに高まった。明治以降は茶道の大衆化や輸出需要にも対応しながら生産が拡大し、現在では国内で流通する茶筌の大半がこの地で作られている。長い歴史の中で穂先の数や形状による多様な種類が生まれ、流派や用途ごとに異なる茶筌が作り分けられるようになった。伝統的工芸品として経済産業大臣の指定を受け、伝統技術の継承と産地の振興が続けられている。

素材

主な素材は、奈良県内および国内各地で産出される真竹(マダケ)や淡竹(ハチク)などの良質な竹である。茶筌に適した竹は、肉厚で繊維が緻密なものが好まれ、秋から冬にかけて伐採された竹が油分が少なく割れにくいとされる。伐採後は十分に乾燥・枯らし処理を施し、竹の収縮や変形を防いでから加工に入る。近年は国産竹材の確保が課題となっており、産地では原材料の安定供給に向けた取り組みも行われている。竹の種類や産地によって弾力や色合いが異なり、用途に応じて使い分けられる。

技法

茶筌の製作は、竹の選別・乾燥から始まり、外皮の削り出し、胴部の成形、穂先の割り込みと細割り、内穂と外穂の仕上げ、そして穂先を束ねる糸掛けまで、すべて職人の手仕事で進められる。特に難度が高いのが「穂割り」の工程で、専用の小刀を使って竹を均一に細かく裂き、数十本から百本以上の穂先を作り出す。穂先は内穂(うちほ)と外穂(そとほ)に分けてそれぞれ曲げ形成し、最後に糸で丁寧に結束する。穂先の数・形状・糸の色などは流派や用途によって異なり、裏千家・表千家など各流派に対応した種類が作り分けられる。一つの茶筌が完成するまでの工程は細かく分業化されている場合もあるが、熟練した職人は全工程を一貫して手がけることもある。

風土と工芸

奈良県生駒山西麓に位置する高山町は、内陸性の気候で湿度変化が大きい地域である。竹材の乾燥・保管に適した環境が整っており、繊細な穂先加工に必要な竹の安定した品質確保に地域の気候風土が寄与してきたと考えられる。

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