つくる旅
織物

喜如嘉の芭蕉布

Kijoka Bashofu

沖縄県

喜如嘉の芭蕉布は、沖縄県大宜味村喜如嘉を主産地とする、イトバショウの繊維から織られた伝統的な布。軽く涼やかな風合いが特徴で、沖縄の夏衣として古くから愛されてきた。

歴史

芭蕉布は琉球王国時代から沖縄各地で織られており、王府への献上品や庶民の日常着として広く用いられてきた。なかでも大宜味村喜如嘉は、気候・水質・技術伝承の面で優れた条件が重なり、最高品質の産地として知られるようになった。明治以降、木綿や化学繊維の普及によって各地の芭蕉布生産は急速に衰退したが、喜如嘉ではコミュニティ全体で技術を守り続けた。昭和中期には人間国宝・平良敏子氏をはじめとする織り手たちの尽力により技術が再評価・体系化され、国の重要無形文化財にも選定されている。1989年には国の伝統的工芸品に指定され、今日も集落の女性たちを中心に手仕事による生産が続けられている。

素材

芭蕉

主原料はイトバショウ(糸芭蕉、学名:Musa balbisiana 系の栽培種)の葉鞘から取り出した繊維である。イトバショウは沖縄県内、とりわけ喜如嘉周辺で栽培され、収穫後に葉鞘を丁寧に剥いで繊維を採取する。繊維は部位によって品質が異なり、中心部に近い内層ほど光沢と細さに優れ上質な糸が取れる。染色には琉球藍(リュウキュウアイ)やフクギ、テカチなど沖縄在来の植物染料が用いられ、自然な色合いを生み出す。非常に細い繊維のため、糸をつなぐ績み(うみ)の工程が品質を大きく左右する。

技法

制作工程は、イトバショウの栽培・収穫から始まり、葉鞘剥ぎ、繊維の精練(煮練り)、績み(umi:短い繊維を指先でよりつないで長い糸にする)、染色、整経、機織りまで、すべて手作業で行われる。績みは熟練した指先の感覚を要する最も重要な工程で、1反分の糸を作るだけで膨大な時間を要する。機織りは高機(たかばた)や地機(じばた)を用い、平織りを基本としつつ、絣(かすり)技法によって精緻な幾何学文様を表現する。完成した布は、軽量・通気性・適度なしゃり感を持ち、沖縄の亜熱帯気候に最適な夏の素材としての評価が高い。

風土と工芸

沖縄県大宜味村喜如嘉は亜熱帯性気候に属し、高温多湿な環境がイトバショウの生育に適している。また山間部を流れる清涼な水は繊維の精練・染色に欠かせず、豊かな自然環境が芭蕉布の品質を支えている。

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